確かバスの中にいた。
温泉地に向かう途中で、久しぶりの温泉を楽しみにしていた。
震災を知ったのは、夜につけたテレビだったように思う。
携帯電話のメール機能などがほとんど使えず、辛うじて電話が通じた。
北海道内だが心配になった母親が電話をしてきた。
無事であることを伝えると安心したようだった。
テレビをずっと見ていて何かができるわけではなかった。
ひとまずは温泉地に来たのだからゆっくりとリラックスして楽しもうと思った。
できることをする。
楽しみにしていたのだから、楽しむべきだと考えた。
もし身内がいたら、友達がいたら心境は少し違っていたのかもしれないけれど、それでも人には各々の日常と囲まれている環境がある。
地球規模で見ると人間には不条理さがつきまとう。
一年経って何か進めたかというと、どうにも居心地が悪い。
誰かのために何かしなければならない前に、自分のことをしなければいけない。
その自分のことすらまともになっていない。
動けやしない。
そして自分のことができたら、今度は支援してくれた人にお返ししなければいけない。
順番があり、その最初のやつさえこなしていない。
進まなければ、という思いが随分空回りしているようにも感じるけれど、それでも苛立ったり焦ったりしてはいけない。
そうして、進んでいかなければいけない。
思いだけ、ぽかんと浮かんでいるような気持ちだ。
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