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2012

田中慎弥氏の芥川賞会見について

西村賢太氏の時も非常に印象的だったが、今回の田中慎弥氏の会見では非常に学ぶものが多かった。
略歴を見れば田中氏が偏屈な感情を持つ理由もよくわかる。
私も作り手だから、本当に自信のある作品をいくつかすっ飛ばされて今回の受賞となったら、「何を今更。この節穴ども」と罵りたくなるだろう。

田中氏は長州人だから、江戸の人間に選ばれて「はい!本当にうれしいです!」だなんて爽やかに会見したんじゃ、長州人としての気質が疑われかねないと思っていたが、どうやらあの会見は素らしく、あとで折れたと聞いてちょっと残念に思った。

しかし何よりも今回の会見で大きな学びを得たことは、生意気でも小賢しくともふてぶてしく無礼にしたほうが、メディア露出が増えるということだ。
そして何より人の印象に残る。
作家なのだから作品で印象に残せよ、という意見もあるだろうが、そもそもあの賞は「商業的な賞」なわけであり、名誉とか実力とかよりも、文学的なお祭りとしての神輿担ぎであることは少しでも文学を噛んでいる人には言わずと知れたことなのである。

今回芥川賞は二人受賞しているが円城塔氏に比べれば田中氏のメディアでの騒がれようは圧倒的な差がある。
真面目に会見した方よりもふざけている方が騒がれているのだからバカらしいことこの上ない。
文学賞の中でもNHK、全国紙、メディアに堂々と流されるのは芥川賞と直木賞しかない。
ましてや芥川賞は「新人に」という趣きが強い賞である。
だいたい地位がある程度固まっている直木賞作家とは違い、「賞を取っても明日の命がわからない」のが「芥川賞」なのだ。

これらのことを考慮すると、手段を問わず強くキャラクターを印象づけた方が勝ちなのだと見ながら感じたのだ。
読者やファンというものはせいぜいいっても100人に1人の割合でしかつかない。
これがほぼ文学の最大値だとしたら、100人に出会うよりも千人。千人よりも百万人。百万人よりも一億人に出会う方が圧倒的に作家としては勝利なのだ。
その意味でもテレビに映ったのなら「江頭2:50」並のギリギリさで、派手なパフォーマンスをしたほうが株があがると私は見た。
嫌う人間は嫌えばいい。最初から人格で作品に入る人は、まず読まない、読み込めないと判断した方がいい。淡い期待を捨てて狡猾に、一度切りのお祭りを最高に演じてやったほうが、あの場面では勝利なのだ。
作家はテレビで勝負するものではなく作品で勝負するものなら、もう二度とテレビに出ずともよいという覚悟でいくらでもぶちかませばいいのだ。
あとは作家としての実力で勝負していけばいいだけの話。

作家の価値をあげる最初の砦は「入り口の大さや広さをいかに確保するか」にかかっている。
これは自分で展開していてよくわかってくることだ。
まず興味を持ってもらって読んでもらうまで引き込まなければいけない。
そのためには色んな意味で露出を多くしなければいけない。
この最初の段階を効果的に展開するには最も大事な席でテレビに映ってふざけたように振る舞い印象づけた方がいいに決まっている。

そんなこんなで、万が一にもあの場所に立つ日が来たのなら、せいぜい派手に振る舞ってやろうと心に誓ったのである。
「ああ、もらってやるよ」ぐらいの勢いでなっ。

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Comment

無礼にしたほうが印象に残りやすい

  • 美佐羅
  • 2012-01-24 23:41
  • edit
これはありますね。
なかなかすごいパフォーマーだなって思いましたよ。
酔った勢いもあるのでしょうけど、マスコミを通じて
覚えてもらったら、良い宣伝ですし。

田中さんのことを書いてる記事はいくらもありますけど、
↓のサイトの記事も独特で面白い。
http://www.birthday-energy.co.jp

石原都知事との関係とかも書いてありました。
見方によっては面白い二人ですね。

Re:無礼にしたほうが印象に残りやすい

  • あさかぜ(光野朝風) 〔管理人〕
  • 2012-01-25 03:44
なるほど。
占いから今回の様相を眺めるというのも面白いですね。

あの偏屈な石原節の後釜が余計拍車のかかった人になったりしたら、げんなりするでしょうが、そこそこ評価していたとツンデレなのか知りませんけど言い残して去っていきました。
そもそも「身内」だけで評価すると変なことになるのは当然でオタクがオタク度を評価するといった感じになってくるのは当たり前。
少しずつ棺桶に近い方から退場していくのは自然の習いですが、はたして「文学」はどこにいくのかという思惑も行き交うことから近年の芥川賞は古いものと新しいものを残そうというコンセプトが見え隠れするのも確か。
古い考えなりに知恵を絞っているのでしょうが、中には「寝てしまった」と堂々と言う審査員もいることから「やれやれ」と思っています。
選ぶ方も選ばれる方も偏屈ならば同類。
まさに「共食い」であります。
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あさかぜ(光野朝風)
年齢:
45
性別:
男性
誕生日:
1979/06/25
自己紹介:
ひかりのあさかぜ(光野朝風)と読みますが光野(こうや)とか朝風(=はやぶさ)でもよろしゅうございます。
めんどくさがりやの自称作家。落ち着きなく感情的でガラスのハートを持っておるところでございます。大変遺憾でございます。

ブログは感情のメモ帳としても使っております。よく加筆修正します。自分でも困るほどの「皮肉屋」で「天邪鬼」。つまり「曲者」です。

2011年より声劇ギルド「ZeroKelvin」主催しております。
声でのドラマを通して様々な表現方法を模索しています。
生放送などもニコニコ動画でしておりますので、ご興味のある方はぜひこちらへ。
http://com.nicovideo.jp/community/co2011708

自己プロファイリング:
かに座の性質を大きく受け継いでいるせいか基本は「防御型」人間。自己犠牲型。他人の役に立つことに最も生きがいを覚える。進む時は必ず後退時条件、及び補給線を確保する。ゆえに博打を打つことはまずない。占星術では2つの星の影響を強く受けている。芸術、特に文筆系分野に関する影響が強い。冗談か本気かわからない発言多し。気弱ゆえに大言壮語多し。不安の裏返し。広言して自らを追い詰めてやるタイプ。

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