アカデミー脚本賞・作品賞・助演男優賞(マハーシャラ・アリ)受賞作。
ヴィゴ・モーテンセンが好きで、予告を見た時誰かわからないほど太っていたから、この人誰だろうと調べたら、あのロードオブザリングのアラゴルンの役の人が今回はイタリア系の用心棒役。
ロードオブザリング以来見ていなかったけど、面影ないほどに太っているし、見事な太鼓っ腹も見せてくれる。そして何より映画の中でも沢山食べるシーンがある。
寝る前にピザとか最高に太るやつじゃん。しかも1枚まるまるかぶりついてる。
ケンタッキー・フライド・チキンよりも、ピザを半分に折って丸かじりの方がインパクト強すぎて。
とヴィゴ・モーテンセンのことばかり書きそうだけれど、僕は黒人ピアニスト役の人を知らなかった。
なんせずっと映画から離れていたから。
マハーシャラ・アリ。
アカデミー助演男優賞を今回も含めて2度も受賞しているなんて、物凄い実力を持った人。
役柄は天才ピアニスト。
カーネギーホールの上に住んでいて・・・って、カーネギーホールと言えば鋼鉄王アンドリュー・カーネギーが建てた音楽家として、そこで演奏できること自体が名誉となるような場所。
そこに住んでいるなんて・・・というぐらいの人だから、だいたいどれぐらい凄いのかは想像がついた。
実話をモチーフにしたものらしく、脚本にはヴィゴ・モーテンセンが演じたトニー・リップの息子さんも関わっているのだから、映画が始まる前から粋な準備が整っている。
当時黒人差別がきつく、場所によっては深夜の外出すら制限されていた時代、グリーンブックという黒人が泊まれる宿をリストアップした本を持って演奏旅行に出かけるのだけれど、マハーシャラ・アリ演じるドン・シャーリーはとても難しい役柄だったと感じる。
感情を抑えながらも、怒りや悲しみや憤りを演奏で表現する。
俗世にまみれたことがなく、世間の垢など一つもついていない小綺麗さをよく演じ切れていて、さりげない仕草やあくまでスマートな振る舞いが余計にヴィゴ・モーテンセンのガサツさを引き立てていた。ヴィゴ・モーテンセンだって大雑把で手癖が悪くて人の悪い部分を知っていてと逆に人間の汚れた部分を知り尽くしている人間をよく表現していて、よかったのだけど、マハーシャラ・アリが凄すぎた。
仲間と深く触れ合うトニーに対し、孤独な天才シャーリー。
お互い、いい意味で変えあっていく姿が最後の最後までいい余韻を与えてくれるし、久しぶりに「ああ、いい映画見たなー」と胸がじわじわあたたかなもので締め付けられる感覚が長く続く。
シャーリーのお坊ちゃんっぷりが品が良すぎて、トニーが品の良さを崩していく。
ラブレターがオシャレなんだよね。
久しぶりにラブレターなんて書きたくなったよ。
高校以来書いてないよ。
全体的にはコメディタッチで黒人差別のきつい映画が描かれる時、普通は結構エグさがきつくて重苦しい雰囲気を与えがちだけれど、この映画は音楽とユーモアと知性が悪いものを笑いに変えてくれる。
やっぱり必要悪ってのは大事ですよ。
ワルのやり口を知っている。だから守れるものもある。
もちろん暴力はいけないし、暴力自体が敗北という主張はもちろんだけれど、他者の暴力を抑えつけるには暴力に代わる力が必要になる。
だから結局は力がなければ変わらないのかもとも考えた。
ドン・シャーリーは黒人のコミュニティにも入れず理解もされず、かつ白人からも差別をされる。
なんでわざわざボコボコされるのわかりきってるのに差別のキツイ南部へ演奏旅行へ出かけるのか。
静かな役柄ながら、そんな信念と強さをあわせもっている。でも激情に身を任せない。
人間的な振る舞いとしてみても、なかなかできないことだよ。
最後は落語のオチみたいに綺麗に終わる。
久しぶりにリピートして見たい映画のリストに入りました。
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