自分がとことん独善的なのではないかと思い悩むことは多々ある。
ふと、携帯小説で流行ったやつのレビューを見ていたら、思い出したことがある。
十年も前になるかと思うが、とある掲示板サイトに出入りしている私は、固定のハンドルネームで書き込みをしていた。
毎日が楽しくて、書き込みを何度も覗いた。
パケット代だけでも数万単位で飛んだ。
その中でも親しくなる人たちがいる。
新規がそれほど頻繁には入ってこないので、当然クラスのような感じになる。
掲示板だけではなく、電話番号やメルアドも交換した仲間もいた。
ある日、当時高校生だった女の子と、似たような年の男の間で事件があった。
男は「好きだ」と女の子にアタックしていた。
人をあまり疑わないその女の子は、わざわざ車で来た男の子についていき、家に連れて行かれ、処女を奪われた。
男の家には母親もいたはずで、あれだけ嫌がったのにどうして、とか細い声で電話で話した。
その話を聞いたとき、私は憎しみを抱いた。
でも、女の子は事を荒立てないで欲しいと言っていたので、我慢した。
しばらく男の書き込みはなかったが、ある日書き込みをしていた。
その時にはむなしく眺めていた。
その前に、女は男を許した。
「これからも仲良しでいようね」
と、伝えたと連絡を受け、衝撃に震えた。
どうして?どうしてなんだ。
なぜ許すんだ。
わからなかった。
今でもわからない。
ただ、レイプとして捉えるのではなく、もっと違った形で捉えたかったのかもしれない。
憎しみを抱くより、別の形で記憶を残したほうがいい。
しかしその子のいろいろな言葉が思い浮かんでいた。
「あーあ、ファーストキス奪われちゃった」
「初めてだったのに。嫌がったのに」
明るそうに言おうとしていたけれど、いつもよりトーンの低いその言葉を思い出すだけで自分は男を憎んだ。
その女の子には、病院の治療費を渡していた。
下半身が気になり、親にもこのことを話せないのでどうしたらいいのか、と悩んでいたので、お金を送ってあげた。
その当時の女の子の行動が自分を裏切ったとは感じなかったが、自分の胸の中に育った憎しみをどこに持っていっていいかわからなかった。
好感の持てる子だった。
純粋で、明るくて、人を楽しませるのが喜びで、人の長所をとことん認めて喜べる子だった。
好きだった。
だからこそ、なおさら、男が許せなかった。
人を好きになるということはどういうことなのか、今でもよくわからない。
理屈抜きに惹かれるものがある。
だから好きになる。
その当時はそれで納得したかもしれないけれど、今はそうは思わない。
好きになることで、独善的になるのは、いけないと思っている。
そこには、思いやりがない。
好きなら、思いやれるはずだから。
だから、独善的な恋を、簡単に人を傷つけられるような恋を、自分の都合で勝手にあれこれできる恋を、自分は恋とは呼ばない。
自分の思いが、独善的なのではないかと悩むことが多々ある。
勝手な思いを押し付けているだけなのではないかと。
あの女の子は、もう結婚しているだろうか。
だとしたら、きっといい人を見つけているかもしれない。
あの子は望みを高く持つ子だったから、今ではきっと立派になっているだろう。
自分は、どうだ…?
あの頃の、愚かなままの自分が、まだ見え隠れしているような気がする。
このことを書くのもまた、自分の独善的過ぎる気持ちの表れのような気がしている。
今はどこにいるかもわからないが、幸せに生きていって欲しいと、あなたのことを思い返しながらこれを書いています。
お幸せな人生を。
[0回]
PR