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あさかぜさんは見た

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07/14

Sat

2007

話の流れからか、「詩読む?本当に読むの?」と飲み屋のバーテンに念を押して、「ならもっていく」とバーテンに告げた後日、書き溜めた詩を未編集でボンと持っていった。プリントアウトして渡した一番上の二枚には下記の短い話をつけた。その店はホステスさんも来るお店で客層が広く、「せっかくだから見せて生の声聞きましょう」という話をバーテンがふってきて、それは良い考えかもと、側で聞き耳を立てながら話を聞いていたら、月に8冊ほど読むというホステスさんに酷評されよい勉強になった。
自分が欠点としているところをすべて端的に述べらた。
「出だしから陳腐」「小さな世界にとどまっていて読む人が読めば恥ずかしすぎて読めない」「もう少し他の作家さんの本をたくさん読んだほうがいいよ」「こんだけ渡すなんて思いやりがないよね」と最初の2行でポイされた。
ホステスといっても安っぽい感じではなく、結構お金を持っている人を相手にしているホステスだったので、最初から下品な文章の出だしでしゃれた上品さの欠片もなかったという判断なのだろうが、文章などから、書いている人の人物的な器まで読み込んでいたような感じだった。恐ろしいことだ。
今これを書いている時でも体が冷えて妙な汗が出ている。
前にも「村上春樹の足元にも及ばない」と言われ「紙がもったいないから(裏側メモに使えるでしょう)」と他の人に返されたことがあったが、今のレベルは所詮その程度なのだろうと思う。
万人に受ける文章はないけれど、それを理由にして現状に甘んじるのは夢を捨てることと同意なので、自分の中でうまく意見を取捨選択する必要性はあるけれど、今回の意見はあまりにも的を得すぎていて正直血の気が引いていくのがわかった。
克服すべき課題は見えていても、その課題をどのようにすればクリアできるのかが未だに見えてこない。そのホステスさんに言われる前から問題意識として持っていたけれど、ここまでズバリ言われるとは思ってもいなかった。一気に緊張し、あまりの緊張感に吐き気もしてくる。
少なくとも、月にそのホステスさんを上回る読書量でなければならず、文章に携わろうとしているのだから、知識や感性や技術の練磨はしていかなければならない。当たり前のことだ。
目の肥えた人をうならせるだけの技術はなく、技術なき者にに品性の欠片もあるわけはなく、ゆえに完成されたものなどなく、それは作品と呼ぶに耐えないものである、という大きな大きな課題を背負って、心を入れ替えていこうかと感じた日でした。

続きは酷評されたものです。





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「NOIR(ノアール)」

 寂しげな背中を向けるよりも、男は少しだけ強がった背中を向けた。「死ね」と大声で叫ぶ女の捨て台詞が男の背中に叩きつけられていた。男にはもう時間の感覚はなく、夜の雑多で混沌として、どこに行くかもわからないような混沌の流れに身を任せながら夜の街を歩いていた。
 繁華街に並ぶ飲み屋はどこも似たように見えて、そこに集う人間もまるでマネキン人形のような、ショウウィンドウの中での出来事でしかなく、たった今女を捨ててきた男の寂しさだけが男の世界の中心だった。
 年配の酔客が数人わいわいと騒いでいるのが気になり目を向けると、バーテンの写真が入って顔を入れられる穴が開いたパネルが置いてあり、そこに男の酔っ払いが顔を突っ込んで女たちに写真を取られていた。
 もしあのパネルがどこかのバーテンではなく、どこかの大女優や大俳優だったとしても遊び半分で顔を突っ込むのだろうか。何にもなれない俺にはできないと思い、男はとぼとぼと歩きながら過ぎ去ろうとした。
 バーの名前は「NOIR(ノアール)」で、意味はフランス語で黒だ。何があっても、真っ黒になることも、真っ白になることもない心を持って人は生きる。それでもどこかで何色かになりたい衝動や願望を持ちながら外見を装う。今は心に装いができるほどの余裕がなく、何も考えずに飲みたい気分だった。外に、顔が抜けた特大バーテンパネルをメニュー入りで載せるユーモアが気に入って、入ってみた。
 店の中は黒を基調にしたモダンな店だった。カウンターの椅子と酒瓶を置いた棚以外はほとんど黒だ。カウンターには二人の客。一期一会にもならない、都会の他人。男一人、女一人が離れて座っている。カウンターの赤の椅子に座り、「いらっしゃいませ」と言った、めがねをかけた坊主頭のバーテンにウォッカのズブロッカを頼む。奥にももう一人金髪のバーテンがいて、二人の客の相手をしていた。
 酒瓶の並び方から、慣れた感じがした。慣れてないと、酒瓶の並び方が雑多になる。客層や出る酒もだいたい決まっているのだろう。目の前にロックのズブロッカが出される。溶け出す氷をカラリと鳴らし、グラスを傾けながら、肌に染み付いたぬくもりが剥がれ落ちていく恐怖にも似た寒気を感じながら、酒を口に含むと、ズブロッカの桜餅のような芳香が鼻腔に広がる。
「お仕事帰りですか?」
 そう聞く坊主のバーテンに男は答えた。
「ふられてきたよ」
 「え?」と一瞬目をパチリと大きく開けて驚いた顔をしたバーテンをよそに男は手に持ったグラスを見つめながら自嘲的にふっと笑った。
「女がいて、飽き飽きしていたと思っていたけれど、いざ別れると、一緒に共有していたものがたくさんあったということに気がついたよ」
 染み付いた肌のぬくもりや感覚を失うことが、拠り所を失った凍える心のように震えていた。ひとつひとつの肌の感触までが思い出される。いつもは思い起こさないことを、どうして失ってから敏感にまで思い起こすのか、不思議に思いながら、戸惑ったような顔になったバーテンの目を覗き込みながら考えていた。
「僕もこの前ふられちゃいましたよ。一ヶ月くらいで。めんどくさくなっちゃって」
 ニヤっと明るい笑顔を向けるバーテンの瞳は思ったよりも深かった。色々と人間のことを深く受け止めていくと人の瞳は深くなる。男は「そうか」と答えて、また酒を口に含んだ。
 世の多くの人たちの恋愛観は、純愛を夢見つつ、相思相愛が永遠に続くことを願っているのだろうか。しかし、一方現実では、いろんなわがままや許せないことに振り回されて擦り切れていくのだろうか。雑誌や本では、いかに自己欲を満たして、それを正当なものとして通すかが公然と語られる。男は自分の今やってきたことと、女の涙目の恨みのこもったような目を思い出しながら、一気に杯を空ける。
 酔いと共に思いは廻る。感傷というものなのだろうか。馬鹿らしいと思いながらも様々なことを思い起こす。バーテンに何か言いたかったような気もしたが、それもだんだんと話さなくてもいいと思うようになってきた。空になったグラスを見てバーテンは言う。
「他のものも飲みますか?」
「いや、これ一杯でいいよ。悪酔いしそうだから」
(とっかえひっかえ他のものを流し込んでも、きっと何も見えてこないさ)
 男は心の中でそうつぶやいて金を置いて寂しげな瞳で出て行った。
 バーテンは夜の闇の中に消えていく男の背中を「ありがとうございました」と言い見送った。溶け出した氷が水となってグラスの底にたまっていた。カウンターの赤い椅子には、新しい客が座り、違う酒が出されるだろう。
 外に出た男は店のパネルを振り返ってみた。店には少しずつそこに集う人間の息づかいが染み込んでいく。相手をしてくれたバーテンの奥深い瞳を思い起こしながらきらびやかなネオンの星に消えていく。夜空の星も見えない都会の繁華街は男の影すらも飲み込み、平然とした装いをして時を過ごしていた。

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プロフィール

HN:
あさかぜ(光野朝風)
年齢:
45
性別:
男性
誕生日:
1979/06/25
自己紹介:
ひかりのあさかぜ(光野朝風)と読みますが光野(こうや)とか朝風(=はやぶさ)でもよろしゅうございます。
めんどくさがりやの自称作家。落ち着きなく感情的でガラスのハートを持っておるところでございます。大変遺憾でございます。

ブログは感情のメモ帳としても使っております。よく加筆修正します。自分でも困るほどの「皮肉屋」で「天邪鬼」。つまり「曲者」です。

2011年より声劇ギルド「ZeroKelvin」主催しております。
声でのドラマを通して様々な表現方法を模索しています。
生放送などもニコニコ動画でしておりますので、ご興味のある方はぜひこちらへ。
http://com.nicovideo.jp/community/co2011708

自己プロファイリング:
かに座の性質を大きく受け継いでいるせいか基本は「防御型」人間。自己犠牲型。他人の役に立つことに最も生きがいを覚える。進む時は必ず後退時条件、及び補給線を確保する。ゆえに博打を打つことはまずない。占星術では2つの星の影響を強く受けている。芸術、特に文筆系分野に関する影響が強い。冗談か本気かわからない発言多し。気弱ゆえに大言壮語多し。不安の裏返し。広言して自らを追い詰めてやるタイプ。

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