ワークショップにはオンラインもあったがオンラインでは意味がないと考えた。
壤さんの声は体感しなければ紐解けないことは感覚としてスッとわかったので、体で受け止めようと考えた。
せっかく北海道から行くんだ。
酒クズの真価を発揮して、北海道を紹介したいと考えた。
お酒は飲まれるとのことなので、断られても持っていこうと考えた。北海道もまた力強い土地であることを感じて欲しくて。
時期的にもちょうどよく、北広島の近くには栗山町がある。100年以上もの歴史を持つ小林酒造。現代においても新しい試みをしながら銘酒を作っている。
「北の錦」のあらばしりが、ちょうど3月の上旬に手に入った。1か月も経たずに売り切れてしまうあらばしり。ようは一番搾りだ。この時期にしか出てこない限定品と言っていい。
そしてもう一つ、Twitterで少し絡んでもらっているおたるワインの公式アカウント。
ワイナリー限定のワインを購入して東京の写真を撮ることをやってみようかなと考えた。
飛行機には4年ぶりに乗ったのだろうか。
飛行機は満席。聞くと要請解除から混みだしたと言う。
犬がフライト中ずっと鳴いていた。怖かっただろうに。初めてなのかわからないけど普通体験しないもんな。
自分も怖くてたまらない。怒られたらどうしよう。厳しすぎたら心が折れてしまう。
飛行機に乗るまでは正直億劫だった。
相方への4日分の食べ物を作り置き。カレーとか、ミートソースとか。ご飯さえ炊けばしのげるはず。足りないものはお惣菜なりでしのいでくれい。
ほぼ最終便でワークショップ前日に着く。
切り替えが下手くそすぎて1週間前から緊張していたため、内心そわそわしている。
東新宿のアパホテル。ちょうどワークショップの会場まで10分。
近すぎず遠すぎず。
これがいい。
帰りの時間、学んだことを歩きながら整理する。それでも考える時間を取りたいなら遠回りすればいい。
それがいい。だから安い宿よりも、多少お金がかかっても精神的に落ち着く宿を選んだ。
案の定、眠れたのは3時間。東京滞在中はずっと睡眠時間は3時間だった。
どんなに酒を飲んでもダメだった。それほど気が張っていたのだろうな。
ワークショップ初日、26日。
ワークショップが始まったらほとんど観光どころではなくなるだろう。心理的に。
だから初日にワイン片手に駒形橋からのスカイツリーと一緒にワイン。雷門とワイン。
写真を撮りながら公式アカウントにリツイートされるという遊びをしていた。
桜が綺麗に咲いていた。
ワイン片手に街練り歩いても自分程度の変人なんて東京にはごまんといるため、別に変な目で見られることはなかった。
こりゃ一升瓶片手に飲み歩いても誰一人気にも留めないだろう。
何度来ても不思議な街だ。
今回東京に来たもう一つの目標の中に「浅草の芸人を見る」ことがあった。
「どんなに惨めになっても浅草の芸人で死ぬなら本望」みたいな言葉をビートたけしが言っていたような気がしていて、その浅草の芸人ってどんな感じなのだろうと興味があった。
いくつか芝居小屋があったけれど、すぐ目に留まった小屋を物珍しそうに眺めていると、綺麗な女性から声をかけられ「チケット余ってるんでどうですか? 面白いですよ」と言われ「お金払います」と言っても「大丈夫です。余ってるんで」と1枚くれた。
入ってみると早速やっている。今回は歌がメインらしいのだけれど、おじいさんがダジャレのようなネタを披露している。
お客さんはほとんど高齢。若い人がいない。
本当に需要があるのかと疑問に思うけど、ちょっとクスクス笑ってる。
昭和の初期にタイムスリップしたみたい。
次々に出てきては芸を披露する。
歌や踊りやネタ披露。
たくましいものだと思った。
中には「終戦後、日本に帰還する人たちが多い中歌われた・・・」なんて言ってるけどきっとその人、たとえ戦後だったとしても赤子ぐらいで記憶がないんじゃないのか。
そんな歌を、さも自分が体験してきたかのように歌っている。見た目よりも年がいってるんだろうか。わからぬ。
ポロンとギターを鳴らしているけれど、音が正しいのか、ただないと寂しいから出しているのか微妙で、歌声の迫力だけで押し通している感じ。とあるレコード会社所属と言ってて、歌はよく声が出ていた。
売れずとも、そんなことは関係ない。死ぬまでやってやるのが芸人魂。
芸とは何かの神髄を教えてもらった気がする。
自分も東京に来たのだから尻込みせずに思いっきりやってやろうと思った。
一番馬鹿らしいのは、恥ずかしいとか怒られるとか、そんな不安を持って全力を出せず、ダメ出しを引き出せずに、何が悪いのかもわからずに帰るということだからだ。
何のために来たのかまったくわからなくなることだけは避けたかった。
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