母が最近相撲中継にのめりこんでいる。
色々と場所によって応援する力士が変わり、なぜ変えたのかと聞くと「強い人応援するの」と答えた。
「ダイエットしなきゃ」
と、母は最近体重が増加してきたのが気になるようだ。
前は相撲など見ていなかったが、急に親近感がわいたのだろうか。
小腹がすいたと納豆を食べながら、今日の大一番を見ている。
スポンサーの垂れ幕が横綱の立会いの前にずらりと土俵の周りを回る。
「あれ、いくらになるんだろうね?」
俺が言うと、母は「さあ?」と答える。
相撲を見終わると、ちょうど俺が出かける時間になった。
「ダイエットしなきゃ」
マクドナルドのダブルクォーターパウンダー・チーズを大口を開けながら食べている真横の女に俺は絶句していた。
パンから肉がはみ出すぎている。
それが二枚もあって、さらにチーズが肉の上にそれぞれ挟まれている。
「ダイエットって、お前…」
ガラス前にある席は歩道のまん前にある。
よくもまあ、これだけ歩行者が絶え間なく歩く中心街のマクドナルドで 大口開けながらこのハンバーガーを食べられるなと、女の度胸に感心していた。
ハンバーガーを口にしながら女は衝撃の告白をする。
「最近、ちょっと太ってきたんだよね」
だったら食うなよ。
見た目は痩せているが、乙女は細かな体重計の数値が気になるらしい。
「このクォーターパウンダーが」
と、腹の肉を掴もうとすると、いきなり張り手で殴られた。
「だからデリカシーがないって言われるのよ!」
本気で怒られてしまった。だが納得いかない。
「だからって何よ。俺がいつデリカシーがないと言われた?」
「今よ!」
今。そうですね。今確かに言われました。でもこの鬱憤が積み重なっていくようなモヤモヤはなんだ。
女はカップの中に入ったコーラをストローで吸い飲む。
ズズズ、と中のコーラもなくなり、例のそびえ立つようなハンバーガーも完食だ。
俺は、さっき母が納豆を食べているのを見て、ついついご飯を食べてしまっていたから、もう食べる気がしない。
「あれ食べないなんてもったいないよねー」
「いや、俺ダイエットしているからいいんだ」
外を歩きながらしゃべるが意外そうな顔を女はした。
「うそお?だってダイエットしますって感じじゃないじゃん。バクバク食う時は食うし」
とことんムカツク女だ。わたくしはたいそうごりっぷくでございますよ。どうして女って自分のこと棚に上げてズカズカ言えるんだ?まあ、男もか。
家に帰り、チャット画面を開く。
俺がインしたことを登録した友達が見つけ、声をかけてくる。
「こんばんは」
俺も返信する。
「こんばんは」
友達は返信してくる。
「最近、ダイエットしているんだ」
俺は面倒くさそうに返信する。
「そうなんだ」
「なんか、面白い話ない?」
そういえば、あったな。
「最近さ、母親が相撲中継にのめりこんでいるんだよね」
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