以前、夢を語るタイプの中には小さなことからコツコツ語るタイプと、途方もなく大きなことを語るタイプの2種類いて、日本人には前者のほうが受け入れられ、後者はだいたい非難の対象となることが多いような日記を書いた。
多くの人間は夢を見て、それを実現しようとするとき、想像と現実のギャップの埋め合わせが大変で、だいたい根気がなくなるか、もしくは大きな失敗をして挫折する。
世の中には随分と語られるサクセスストーリーが多いが、その後どうして失敗したかとか、失敗してどうなったかとか、そういう人の話は成功に比べて少ない。
特にそういう人間のことを「落ち目の人間ですね」と見る人がほとんどだが、この「失敗」の中にこそ本当の成功へのノウハウが込められている。
プロ、という道を本気で目指そうとするとき、ひとつ覚悟が必要になる。
恐怖と戦うことと、馬鹿正直に可能性を信じることと、行動することを止めないことだ。
特に最初は誰も信じてくれないし、初心者なのは当たり前だし、技術など体験して得るべきものが全て未来にしかない。
そして素人であることの未熟さを曝け出し、親友に話したところで人ごとなのは当たり前だし、時として現実味の無いことに批判すらされるかもしれない。
そうして自分で掴み取るよりも、誰かに使われるほうが本当は楽なのではないか、着実なのではないかと「保険」のことを考え出す。
「失敗してもいいように、いくつかの逃げ場所を用意しておかないと」
これが「まともな考え」とされるけれど、何かを成し遂げようとするのは博打そのものであるから、恐怖に打ち勝つような精神力と肥大する欲望への抑制力がないと、上に上がることは難しい。
特にプロというのは、その道を歩むにあたって、どのような「怖さ」があるのか知り尽くしている人だし、またその「怖さ」をあらゆる技術によって埋めていくものであるから、プロを目指そうとして保険を考えているつもりが、いつの間にか横道にそれ、本筋を見失いながら余計な力ばかり使っているということもよくあることなのだ。
夢を追うには精神のコントロールと欲望の抑制が必須になる。
これは自分の実力(技術以外に対人能力も入る)以上のものが手に入ると思わないことと、失敗しても利点を見出していく好奇心を失わないこと、別の何かに追い立てられるようなことがないよう心の余裕を常に持っておくことだ。
さもなければ、自他問わず何かを責めるようになってしまい、その責めたぶんだけ自分の損失として降りかかってくる。
といっても、この精神のコントロールができる人間は、ほぼ間違いなくある程度達観している人間なので、この境地に至れる人間は数少ないし、むしろ生涯の目標としてもよいくらい難しいことだ。
私の場合だが精神が落ち着かず、何年もまともに動かず酒ばかり飲んでいたし、特に過去に対する未練のようなものが重くのしかかっており、引きずり回して時間を歩んでいた。
そんな黙っていても何者かに圧力をかけられているような精神では、何かに集中することすら難しい。
自分に対して負の要素を抱えている人間も、過去のことばかり気にし、人の批判を恐れ、やがては行動して失敗することに恐怖を感じ、夢を見るだけになり、酒場で語るだけのネタになってしまうことだって珍しいことじゃない。
京都に来て、このような場所だから余計に気がつくことなのだが、この地には数多くの文化があり、様々な形で伝承され発信しようとしている。
たとえば神社仏閣知名歴史などがあっても、知識と好奇心がなければただの建物や文字にしかならない。
狂言だってよく演じられているが、意味を解釈しようとする想像性がなければ、ただの無言の踊りにしか見えず、なんら楽しめないだろう。
人によって、この地では見えているものが違う。
数名の人間と話していると、ハッキリとわかる。
この京都をただの住む場所と捉えているのか、都市という感覚を当てはめ多少刺激の少ない場所と捉えるのか、文化そのものがこの地に数多くあると認識するのか。
何故これだけ違うのかと言えば、好奇心の対象がまったく違い、知識も違ってくるからだ。
今捉えている世界は知識と経験によって成り立っており、世界観を広げていくには好奇心を持ち続けるしかない。
世界は確かに広いが、世界を広く見つめるためにも高い知識と技量が必要になるし、くじけずに進むためには諦観にまみれず好奇心を持ち続けるしかないのだ。
夢を掴むには困難があって当たり前。
むしろ挑戦しなくなることこそ危うい。
行為が続いているのなら、何一つ無駄にはならない。
もし「無駄になった」「失敗して何も残らなかった」などと考えるのならば、それは己の考え方や姿勢そのものが不毛で堕落していることは間違いない。
それは自らへの真摯さを欠いているので姿勢を正すことをお勧めする。
夢にきちんと魂を吹き込めるよう、飽くなき心を失わないように。
夢を目指す全ての人を応援します。
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