「小説家が人間を書くとき、当然その人間よりも深い苦悩を背負わなければなりません。そしてようやくその人間を見下しも美化もせず、真正面から受け止めることができるのです。本物の小説家であるためには、誰よりも死に隣接した場所にいなければなりません。苦悩の奥底から、人を下から支えるのです。それが作品に対しての最大の優しさとなり、人を受け止める大きな器となり得るのです。そして苦悩の分こそ、作品の人間味や抑揚となって充分に表現されてくるのです」
「小説家の能力とは、気づく能力ではなく、気がつかされる能力なのです。むしろこの後者の能力のほうがずっと大事です。人あっての小説。その人を無視するような投げやりなものは、もはやモノでしかないのです。それは小説としての意味も意義もない、ただのモノです。ですからガラクタに成り下がって忘れ去られるのです。小説家は幸運です。与えられたものすべてに感謝でき、そして生かしていくことができる。私は人間と向き合うことができて幸せです。己をしっかりとぶつけてくる、その語りかけに、向き合う幸福があるのですから」
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