米書店大手に淘汰の波 ボーダーズが破産法申請(日本経済新聞)※リンクが貼れず不便なので転載。
【ニューヨーク=杉本晶子】米書店チェーン大手に淘汰の波が迫ってきた。16日には全米2位のボーダーズ・グループが米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。電子書籍端末やタブレット型と呼ばれる多機能携帯端末の普及で、本や雑誌をインターネット経由でダウンロードして読む消費行動が広がったのが背景だ。ネットでの書籍販売も広がり、従来型の書籍流通モデルは変化を余儀なくされている。
ボーダーズの閉鎖予定の店舗(ミシガン州)=AP裁判所への提出書類によると、ボーダーズの負債総額は12億9000万ドル(約1080億円)。大口債権者には、英出版大手ピアソン傘下の米社など、主要出版社が名を連ねた。ボーダーズは米国内店舗の約3割に相当する200店を4月末までに閉鎖し、規模縮小で再建を図る。従業員も削減する方向。金融機関との間で、再生手続き中に5億ドル強のつなぎ融資を受けることで合意した。
ボーダーズのマイク・エドワーズ社長は同日の声明で「長期的に事業を続けるための資金の手当てがつかなくなった」と説明した。同社は1971年創業の老舗だが、2010年1月期まで4年連続で最終赤字を計上。四半期では10年8~10月期に債務超過に陥っていた。
米書店チェーン首位のバーンズ・アンド・ノーブルも2010年8~10月期の最終損益が1200万ドルの赤字となるなど収益悪化が続く。オンラインでの書籍販売額は増えたが、実店舗の既存店売上高が振るわなかった。一方、米アマゾン・ドット・コムは1月末、電子書籍のコンテンツ販売がペーパーバックの販売数を超えたことを明らかにした。
米国では書籍市場全体が07年をピークに縮小に転じている。金融危機を引き金とした消費冷え込みに加え、端末さえあれば比較的手ごろな値段でコンテンツをダウンロードできる電子書籍の普及で、従来型の書籍が押されている。日本でも大型書店に追い詰められ、小さな書店が次々と閉店していっている。
ちょうどシネマコンプレックスができて、小さな映画館が次々と閉館するように。
書店は本を売る場所だ。
しかし今本はあふれかえるほどある。
そして電子書籍の登場により、紙の本よりもはるかに面白い本が出てくるのは時間の問題だろう。
紙でこそ出していないものの、才能のある人間はこの日本にもいる。
あとはその演出方法が整えられれば、チャンスはより拡大する。
そうなると出版社も危うくなるわけだが、その前に書店が打撃を受けることになる。
アマゾンなども次々とサービスを拡大し、家にいながら本に対する人の感触を調べられるようになった。
そもそも、本の魅力とは何だろう。
それは元々「共有したい」という欲求だったのではないかなと思う。
たとえば和歌や伝記や神話には、どこかしら人間らしいものがあって、有体に言うところの「普遍性」がある。
今は好みが多様化しているし、よりニッチになってきているかもしれないが、人間らしい欲求というのは、人間が人間でいられる限り変わらないと思う。
というのは、やっぱり本から何かを得て、無駄に終わらせることはできないわけで、何かしら共有したくなる。
それは「感覚」だったり「考え」だったり「絆」だったりする。
それらのものが一緒に体験できて膨れ上がったら、これほど面白みのあるものはない。
だから人は繋がろうとする力を持ち続けようとするのだ。
書店は、本を売る場所だ。
しかしアマゾンは本を売る以上の機能があって、作家コミュであったりレビューであったり掲示板であったり、本に馴染みのない人でも参考になる。
現在ある大型書店もまた本を売っている。
だから、小さな書店は「本を売ってはいけない」。
つまり大型書店と同じことをしていても潰れるしかないし、アマゾンよりも魅力のあるお店にしなければいけない。
じゃあ、どうすればいい?
普通の本屋では紹介しないような埋もれている名作をアピールして欲しいし、棚だって特殊なカテゴリーで出来上がっているものがあってもいい。
より書店員は専門性を求められる。
私はこれからの時代「本におけるライブ感覚」を引き出したものが生き残っていけると考えている。
書店における「本のライブ」とは、たとえば子供が集まっての感想会だったり朗読会だったり、書店員からの本の力説だったり、大人同士が忘れていたことを真剣に思い出しあったり、「文脈の力を人の体で直に伝える」ことであると思う。
どうしたらこの体を通じて「本の魅力」を伝えられて「相手に本を体感」させることができるのか。
それが実現できた本屋だけが生き残れる。
いわば本屋も「本を物として売る」のではなくて「本を表現する」時代に来たのだ。
売れている本をアピールする時代はすでに終わった。
それはもうアマゾンやネットで充分すぎるほど行われている。
小さな書店がそこにかなうはずがない。
埋もれている味わい深い作品を、地域の人たちと共有するために、店の中の作りから、その演出方法、時には月一でも「書店便り」を作ってお店の中にフリーペーパーとして置き、イベントのお誘いなど、「人と人が関わり、リアルタイムで変化する書店」を作らなければいけないのだ。
その可能性を拡大してくれるのは、皮肉にも電子書籍を通じて発信することになるだろうが。
大本になる「本作り」も、自然と本を作るのではなく「表現してもらえる本作り」にシフトしていくだろう。
それはより強力な文脈を持った本作りをしていかなければならなくなる。
つまりは、より高度な技術が要求される。
一言で言えば「リアルさ」だ。
それは日常におけるリアルさであったり、心におけるリアルさであったり、仕事におけるリアルさであったり、エンターテイメントにおけるリアルさであったりする。
「より感じられる本」。
もう、時代は変わったのだ。
本はより「人のリアル」に踏み込んでいく力を持たなければ生き残れない。
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