結論から言うと説教は自己満足でしかないのではないかと思い始めている。
というのは、長い目で人を見ていると、他人からの助言や忠告を受けて自分の考えを改めたり生活スタイルを変えていく人はほとんどおらず、自分のやりたい日常の中にどっぷりと浸かっている。
ましてや、他人が老婆心で言ったことなど、つまり当人の思考の中にまったくなかった忠告というのは自尊心を傷つけ反発心を抱かせたりすることもあるし、素直に聞いているようでも、ほぼ青天の霹靂状態なので心中穏やかではなく、また初めて聞く内容を一度聞いたからと言ってまな板に水、馬耳東風となる。
そりゃあ、聞かされている当人としては、いきなりどうしてこんなこと言われるのかという相手側のことや、自分のことを深く考察する視野の広さがないと、なかなか他人のお説教など聴けるものではないからだ。
ましてや自分は間違ったことなどしていないし、間違いかもしれないがやってみないことにはわからない、などという理屈で我が道を行かれては、それこそ説教の意味などなくなる。
そもそも。
本当にそもそもなのだが、どうして説教するんだろうって自分のことを色々考えたら、人生経験上見てきて「それはかなりの確立で失敗するぞ」という経験則からなのだけど、よく考えたら自分だってたいした生きていないし、それほど視野も広くないし、もしかしたらこの人なりの知恵で上手く切り抜けられるのかもしれないという淡い期待も持ったりするのだけど、やっぱりほとんど失敗しているし、失敗したとしても当人は自分なりに、恐らく自分の感覚なりに色々やりたいのだから、説教、もっと優しく言ったとしてアドバイスに当たるものは、最も自分を利するものではないと受け入れられないというのが自他共に観察してきた結論なのだ。
じゃあ、その自己満足、どうして満たしたがるのかということにもなるのだが、どうにもこうにも自分が充実していないと他人に説教をしたくなるという不思議な原理が働く。
とにかく忙しい人や楽しい時間を過ごしている人というのは、面白くない人とは関わらないし、関わっていこうとしない。
常に前向きで他人を楽しいものへと引き込んでいき、自分の人生と仲間たちの時間を充実させていく。
そういう人は、説教などという野暮な事はしない。
人の心の落とし所で粋にきめて来る。
本当に困っているときに、すっと助け舟を出すという風にね。
自分はよく出来ていないくせに、他人のことは気になる。
そういう気持ちの弱い人が説教をしたがるのではないか。
いろいろ自分のことを省みているが、そこらが思い当たるのだ。
人間は、欠陥があって当たり前なのだ。
人は、あまりにも当たり前すぎる理屈に対して理解する努力を放棄する。
自分の中で「わかっている」と「思い込んでいる」からだ。
でも実際「わかっている」っていうのは、「行為にできてこそ」「わかっている」、となるわけであって「その言葉を知っているからわかっている」とはならないはずなのに、現代人のあまりの多くの人はこうなっている。
ほとんど例外なく、こうなっている。
で、挙句の果てには「その言葉を知っているから」「その現象を知識としてどこかで読んだから」「人はこうあるべし」という形で「説教」が始まるという、まことに無意味な、まことに滑稽な、本人は物凄い深いことを言っているつもりで薄っぺらな、中身のあるようで経験がないばかりにまったく抜けている、どうしようもないことを言い始めてしまうという現象が起こるのではないかと考える次第なのです。
かといって経験則から話しているとしても、やっぱりあまり役に立たないのではないかと強く思うのは、人の話も聞かずに「こうすればよくなる」的な、相手無視の、心情無視の、人生無視のお話を始めちゃうから、聞かされているほうも「早く終わらせてくれねぇかな」と、ありがたい話もまったくありがたくなくなる現象が起こるわけでありまして、じっと我慢して相手と向き合うこともせず、わっといきなりやりはじめちゃうところ、やっぱり説教する側が相手の話を聞かないのですから、聞く側だって、聞くわけねぇだろってことになるわけでありんす。
以上の理由から、やっぱり説教っていうのは意味を成さないし、ただの「言ってやったぜ。俺いいこと言ったな」という自己満足にしかならず、なんか物凄いうまいこと言ったつもりでも、やっぱり「ウケたらいいな」的なスケベ心が働くので、どこかで聞いたような見聞きして、さも自分が体験してないのに体験したかのようなことも差し挟んじゃうと、もうすべてが駄目になるわけです。
人に言っていいのは、あくまで自分の経験のみであって、自分の過去の欠損や後悔を人にぶつけたって自分の人生なんてよくならないし、相手の人生もよくならないし、なんか本当に説教って役に立たないんだなと、思うんですが、またやっちゃうんだろうな、という自分もここにいます。
反省ばかりの毎日ですよ。
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