日本にはゴールデンウィークなるものがあり、5月3日、4日、5日が国民の休日にあたり、この休日が日曜にあたった場合振替休日が月曜日に発生する。
そのため4月の終わりあたりから有給を使い2週間近くお休みを取る人もいる。
日本人には自由に有休を使う権利はあっても使ったら周囲から何か言われるという職場も少なからずあるので有給申請には皆慎重だ。
有給は遊びのために使うのではなく、病気や葬式等やむを得ない状況で初めて使う人もいる。
日本の法律では年に最低でも5日以上有給を使わなければいけないということになっているが、この法律ができる前は何としても使わせまいと圧力をかけてくる会社も普通にあった。
その法律ができたのも2019年なのだから、わりと最近だ。
ゴールデンウィークという名の日本人の休日には当然働く人もおり、休んで遊ぶ人あれば遊ぶ人の相手にして仕事をしている人ももちろんいる。
嫁は看護師、自分は今年中無休のコールセンターにいるものだからお互いお休みがない。
だから休日が被らないことがほとんどで一緒に休日を過ごせる時間も月に2日あればよい方だ。
自分が娘を1日見ることはなく、だいたいは嫁が1人になりたい時、夜勤の日から明けの日、最大でも半日くらいだろう。
だから娘がこんなことできた、あんなことできたと嫁から報告を受けて初めて知ることも多い。
5月3日、世間がゴールデンウィークと呼ばれるお休みの最中、1歳5か月を前にして初めて10歩歩いたと動画をもらったばかりだった。
小児麻痺を疑われていて他の子どもより反応が鈍く立つことも遅かった。
その娘が10歩も歩いただなんて、胸打たれる部分もあった。
そして少しずつは歩けるようになったが、行動範囲がいきなり広がったため、家の階段から落ちるというアクシデントが起こり、階段を嫌がるようになった。
5月22日ハンドメイドのショップが一堂に並ぶイベントがあり、その会場へ行くと娘が階段を上り出した。
家の階段は急こう配で、上から見ると45度ぐらいあるのではないかと錯覚するほどなのだが、イベント会場は緩やかな階段だった。
その階段をよじ登り、2階席の端まで行き、降りてからまた昇り今度は復路を行き、また戻り階段を降り、ということをやっていたのだが、嫁がゆっくりショップを見る時に娘と一緒になり、娘がまた1階から先ほど上った階段を上り始め、そして2階席を歩き、3往復ぐらいだろうか、かなりの長い距離を歩いていた。
途中で座り込んでも、また起き上がり歩き、ぐらついては座り込み、また立ち上がって歩いていた。
観客席側は階段なので手で遮りながら娘のコースを手で遮りながら安定させる。
夜も足が疲れているのか前のめりで倒れることはあったが、まだ立とうとする。
タフで、ガッツもある。
自分が失っているものを見せてくれる。
ちょっと待って。
5月3日で10歩歩いたと言っていたばかりなのに、5月22日には400mぐらいはいきなり歩き出しているわけ?
いきなりすぎて自分の方が戸惑っている。
その時は娘が怪我をしないように神経を配らせるぐらいが精いっぱいだったけど、夜になって冷静に考えてみて、成長がいきなりすぎてどうしようと考えてしまった。
自分は走ることもまともにできなくなってきたのに、この先娘は兎のように地面の上を飛ぶように走るのかと考えると、衰えた体がついていけるのか、体力つけないとね、と痛感した。
0歳から娘を見ていると、人間の誕生を見ているようだ。
精神や人間のことをミクロ(マクロ)コスモスというが、その言葉がしっくり来る。
人間とは何だろう。
人間は何故生きようとするのか。
人間はいかにして人間たり得るのか。
まるで人類が道具を使いだしたかのような気持ちで娘が歩く姿を心震える思いで眺めていた。
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