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あさかぜさんは見た

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2022

娘が早めに退院できることになった



12月12日、前日降りしきる雪が白い道を作り、白く平野を彩り、白銀の樹氷を育てた。
迎えに行く時その景色がとても綺麗だと思い、国道から逸れて細道を選んだ。
本来は妻のみ退院の予定だった。
何せ2042gの低出産体重児で産まれてきたため娘は保育器の中にしばらくいる予定だった。
しかしお医者も「ポテンシャルがいい」と太鼓判を押し、助産師さんも「この体重でミルク40mlも飲むことなんてそんなにない」と驚いていたようで一緒に退院してもよいとのことだった。



白菜のおくるみに包まれ午前に退院した娘は取り付く島もなく午後には哺乳瓶を譲ってくれるというママ友と合流するため道の駅へ。
そこでは何故か4人ものママ友が集結しており「かわいい」の連呼だったのだが、奇遇にも1人は1歳年上ながら他3人の子供は同じ年度産まれという偶然。しかも前の職場の同僚という珍しいケースなのだった。
なので子育てやおむつの話題となるとメーカーごとの違いを詳しく説明していて何かと参考になっていたようだった。
一方寒空の下に晒されている娘は起きる様子もなく妻にほっぺをぐりぐりされても眉間にしわを寄せるのみで頑なに眠り続けついに起きることはなかった。
よく眠る子なのだ。
寝る子は育つというが退院時には100g以上も増えていたのだから育つのも早い。夜には私の両親とも会うというハードスケジュールをこなし、その日は終了。
娘のマネージャーの私はそっと心の手帳を閉じて短い眠りについた。
それにしても世のお母さんたちは本当によくやっていると感じた。
3時間ごとにミルクをやり、泣くごとに原因を探り解決し、都度おむつを替え、産後のぼんやりとした思考回路で悪戦苦闘して育児をしなければいけないのだから人の手が借りられないと心も体もやられてしまうのはよくわかった。
そして男性にも育児休暇必要ってことは感じた。
交代制でようやく大人しいうちの娘でなんとかなるのだから、これが癖があって泣き止まない子だったらノイローゼになるのは目に見えている。
誰も支えてくれなかったら子供なんて産まなきゃよかったと自暴自棄にもなりかねない。
世のお母さん方、偉い!

12月13日、雨が降りしきる中、前日病院へお会計を払い忘れてそのまま出てきてしまったため再度病院へ行き済ませ、一息ついたところで市役所へ出生届を出しに行く。



午後市役所に着いた頃には雨も上がり虹も出ていた。
市役所の最上階には白い恋人カフェがあり、北広島市限定のマドレーヌのような焼き菓子もあるが、今回は手続き終わるまでコーヒー。Lサイズ手のひらサイズ。380円。ちなみに焼き菓子ミルクの味が強くしっとりでしつこくなく、かなり美味しい。お勧めです。
相変わらず娘は眠っているだけだったが通りかかる職員にちょくちょく「かわいい」と立ち止まって声をかけてもらった。
「午後の仕事頑張れる」と仰ってくれた方も。
カフェでも4人のご婦人方が談笑していたが「今の子は顔整ってるわねー」等お褒めの言葉を頂いた後当時の旦那の愚痴。
「私のところなんて手伝ってくれなかったわよー」と口を揃え。
それにしても、気が付いたことがある。
職員で男性の方にも対応してもらったが子供のことで声をかけてもらったのは計10人以上いて全員女性だ。
男性には一言も声をかけてもらっていない。
……どうしてだろ?
褒めてくれという話ではなく、あからさまに子供に興味があるのは女性であり、男性は他人の子供は微塵も興味がないということなのだろうか。
男は狩りに、女は家を、みたいな原始的な脳の働き云々で片づけてよい話なのだろうか。
圧倒的に男性は子供への興味の持ち方が違うのだという事だけはすぐわかった。
市役所で済ます手続きの中で年間20Lゴミ袋を2歳になるまで分をもらえる助成があり、保育室のような部屋で申請する。
うちは160枚もいただいたが、申請中に娘が泣きだす。
時間を見るとミルクタイム。
不思議と3時間きっかりで泣く。誤差はあるが、ほぼ3時間ごとに泣くから体内時計がしっかりしているのか、元々人間には時間の感覚がしっかりとあり、日常生活の中で失っていくのか。
大人になったら訓練しなければ身に付かない感覚をもう持っているのはよいことなのだが、周囲は百戦錬磨の職員。
ハイシート型のベビーベッドに寝ていた娘のおむつチェックにその部屋全スタッフの目が光る。
「いいか! 新人(ルーキー)! おむつ替えは足を持たず腰をしっかり支えて浮かせろ! わかったか! 返事は!?」
「レンジャー!」
おむつ替え2日目だからといえども甘えは許されない。
泣きわめく娘のおむつをいち早く替えてミルクを飲ませなければならない。
テープ止めに手こずりながらおむつ替えが終わると魔法瓶に入れてあったお湯を哺乳瓶へと注ぐ。
メモリはきっかり40ml。
哺乳瓶は熱々だ。
冷ますのに時間がかかる。
「あ、ミルク冷ますのに道具ありますよ」
と、一人の職員が調理用の銀色ボールに水を入れてきてくれる。
「交換した後のおむつ片づけておきますね」
他の職員がすぐさまゴミを片付ける。
――これが戦場を潜り抜けてきた者たちのチームワークか……っ!
物怖じしている場合ではない。
足を組み、段差で娘を支え、左手の親指と人差し指は耳の下。首をしっかり固定してぽっかり開いた口元へ哺乳瓶の先端を突っ込む。
くわっと見開いた娘の瞳。
勢いよく吸われるミルク。
エネルギーが充填されるかのように中身が減っていく。
完飲! 爆睡!
そう。満足すると間髪入れずに眠りへ入るのだ。
たまに眠りながら飲んでいることもあるけれど。
ゲップ出しも眠っていようが関係ない。
「グゲェ」と言うまで背中を叩き続ける。
背中を強めに叩くので泣きそうなものだが静かだ。
手続きが終わり職員たちの微笑みに見送られ市役所を後にした我々なのであった。
戦いは、これからも続くっ!
話は変わり、嫁の退院後の食べたい物が「卵かけご飯」だった。
妊娠中の10か月は体に気を遣い食べるものも制限していたが、その中に「生卵」があった。
どうせ食べるならいい卵でやってみようじゃないか、と思い「くるるの杜」というホクレン直売所に寄ってみた。
普通のスーパーには高級卵がない。
と言ったって、目ん玉飛び出るようなバカ高いものは、売ってない。
通常の10個入りパックの値段の2倍ほどのもので6個入り。
初めて食べてみたけれども、食べる前は期待してなかったけど、食べたらコクが、コクがっ、コクがすんごーいあって美味しい。
卵1つでこれほど違うものかと感動したものだった。
もちろん「卵かけご飯用醤油」もかけたが塩梅に注意しつつ、卵と醤油の最適解で2人ともにやけながら食したのだった。



何度も書いていたが、雪が降っている。
つまり冬だ。
住んでいる場所は一軒家だが古い。
つまり床暖などなく、ストーブ1つで3部屋以上温めなければいけない。
なるべく敷布や掛け布団など重ねているが娘が震えながら眠っている。
嫁はアルコールアレルギーで酒が飲めないが、よく「瓶が綺麗だから取っておいて」と何本か取っておくことがある。
そして冬場はお湯を入れて湯たんぽとして活用していたが、それを娘にもやろうということになった。



……うん。
なんとコメントすればいいのか。
写真で撮れば大吟醸。
写真を見せれば大炎上。
親が新生児に日本酒を飲ませているとも捉えられなくもないが、もちろん中はお湯だ。
サイズはピッタリ。
今晩は田中酒造の「雪あかり」で眠るがいい。
お腹の中にいた時から右手をあごに充てる仕草が癖のようだが、妻も寝ている時にしている。
その仕草を「エレガント睡眠」と呼んでいるが、遺伝子は生物学的記録以外に、生きている記憶を記録することもできるのか、それとも超自然的なものがあり生命の記憶は何かに繋がっているのか、まだ科学は全てを解明したわけではないそうなので、この小さな命の輝かしさに、今日も眠れぬ時間が続いていきそうだと感じている。

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プロフィール

HN:
あさかぜ(光野朝風)
年齢:
45
性別:
男性
誕生日:
1979/06/25
自己紹介:
ひかりのあさかぜ(光野朝風)と読みますが光野(こうや)とか朝風(=はやぶさ)でもよろしゅうございます。
めんどくさがりやの自称作家。落ち着きなく感情的でガラスのハートを持っておるところでございます。大変遺憾でございます。

ブログは感情のメモ帳としても使っております。よく加筆修正します。自分でも困るほどの「皮肉屋」で「天邪鬼」。つまり「曲者」です。

2011年より声劇ギルド「ZeroKelvin」主催しております。
声でのドラマを通して様々な表現方法を模索しています。
生放送などもニコニコ動画でしておりますので、ご興味のある方はぜひこちらへ。
http://com.nicovideo.jp/community/co2011708

自己プロファイリング:
かに座の性質を大きく受け継いでいるせいか基本は「防御型」人間。自己犠牲型。他人の役に立つことに最も生きがいを覚える。進む時は必ず後退時条件、及び補給線を確保する。ゆえに博打を打つことはまずない。占星術では2つの星の影響を強く受けている。芸術、特に文筆系分野に関する影響が強い。冗談か本気かわからない発言多し。気弱ゆえに大言壮語多し。不安の裏返し。広言して自らを追い詰めてやるタイプ。

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