「8億円札」なるものが100均に売っていた。
人生ゲームのようなお遊びのものだが、一体誰が買うのだというものも100均には多い。
その「誰が」に該当したのが私だ。
最初1枚買い、パソコンの前に置いておいたが、1枚では物足りなくなってきた。
どうせ稼ぐなら8億なんてみみっちいこと考えずにもっと上を目指そう。
だから残り9枚あったが買い占めてきた。
さて、何のために10枚、80億を用意したか。
自己暗示にかけるための道具として仕入れてきた。
僕は小説なんて書いているくせに文字に弱く固有名詞を覚えづらい。
だから人の名前は忘れるが、イメージに残ったものは思い出せる。
これが辛いものもよく覚えているからきつかった。
自分を騙すほどには追い詰められないが、少なくとも見て触って当初の目標を思い出すには文字で抱負を書きだすよりもアバウトで覚えやすく忘れづらい。
文字で覚えづらいならイメージを植え付ける。
「インセプション」という映画があったが、深層心理への植え付け効果は絶大で、個人の行動をも束縛する。
それを自分は四半世紀以上も味わってきたのだから、誰も魂の束縛は説明してもわからないことだろう。
だが、これを逆手に取る方法もある。
それがおもちゃだろうと、毎日毎日自己暗示にかけ、自分をプラスの方向へと催眠へかけていく。
以前ノーベル文学賞目指してますって酔っ払って言ったことがあるけれど、それを思い出した。
テーマはもう決まっていて「色と香り」の世界を第六感も含めて絡め取っていく。
「知れば知るほど感性が閉じていく」
ただそういう「無理解」とは戦っていかないといけない。
解脱には程遠く、怒りや憤りや己への未熟さに今すぐ現世を諦めたいぐらいだ。
意気込んだら心のバランスを崩して、過去のフラッシュバックが来る。
自分は未熟すぎてどこに突破口を見出せばいい。
最終的な目標は「世界の芸術を束ねるシステムをAI」によって実現するということ。
金が必要なのはそのためだし、金がないから自分はチャンスがなかった恵まれなかったのだという言葉を地球上から排除したい。
そんな夢物語をちょっと思い出したんだ。
そこへ踏み出すのに自己催眠が必要になってくる。
12月9日。
婚姻届けを書いてもらったウィスキーバーの店主に娘が産まれたことを報告しに札幌へと出かけた。
すすきの巡回コースがあるのだけど、陶芸家が集まるお店があり、そこに「名陶無雑(めいとうむざつ)」という言葉があった。
雑念無き所に名陶あり、とのことだ。
ここから話すことは、とにかく色々なことを端折る。
割愛なんて言葉じゃ片づけられないほどだが、2003年12月自分にとっての預言書とも言うべき歌舞伎が国立劇場であった。
「二蓋笠柳生実記(ニカイガサヤギュウジッキ)」
過去現在未来がそこにあった。
その未来の中で柳生の放蕩息子が、とある事件があり師匠へ怒り木刀で挑みかかった。
その時師匠の椅子にしていた丸太を真っ二つに割った。
「この切れ口は!」
と師匠は柳生の息子を免許皆伝にする。
その時自分は悟った。
芸事技術事、全ての本質とは怒りという邪な感情であったにせよ「純度100%」にまで高め、他一切の濁りを無くすことなのだと。
この境地に至らねば極められないのだと。
そして純度100%という結晶を作るには、いかに自分の魂への本質へと身を投じなければならないのかと。
もう20年前の話だ。
ことあるごとに思い出していたけれど、まさかここでまた思い出すとは。
やっぱりどうやら、そろそろ真面目に書けよってことだ。
皆様ありがとう。
どうやら関わってくれた人たち全てが、自分の進むべき道を教えてくれるらしい。
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