※今日はいつも以上に妄想を炸裂させてみます。
電子出版事情は「電子出版」のみならず、「出版事情」そのものに関ってくることなのですが、アップルコンピューターやアマゾンが次々と電子デバイスを発表し、デジタルデータで書籍を読めるようにしています。
ipadとかキンドルとか、携帯できるものですね。
実際携帯電話では長い文章を読むには大変疲れ、大画面でないと目が疲れるどころではなく、痛くなるくらい苦痛になります。
読めるのは主に「若い人」だけになってしまうために、携帯電話での読み物の需要は絞られてくるように思います(携帯電話を使っている世代が繰り上がってくることもありますが)。
ですからどうしても大画面でなければ、長文の文字量には対応できなくなります。
そこで、デジタルコンテンツを展開しやすい画面のデバイスができると、今まで沈黙していた分野が目を覚ましてくる可能性があるのですが、私は小説などを書いているので、今回は出版に関してのことを考えてみたいと思います。
人間というのは、たとえば二つのものを提示されるとどちらかを取りがちですが、あまりにも選択肢が多いと何も選ばない傾向があるそうです。
今の本の事情も、あまりにも数が多すぎて何がなんだかわからないという印象のほうが強いように思います。特に本に馴染みのない人は余計にとっつきにくい。
ですから、この「選択の時間を節約」するためにランキングが多用されるという悪循環になり、時間に耐えうることのできる「良書」が余計に力を持たなくなります。
そのような状態を懸念している作者というのは(私の勘ですが)意外に多いと思います。
今までは出版社の支配下にあった作者ですが、ツイッターや原作者のブログなどのツールによって、徐々に内部事情が暴露され、ひどい体質のところから作者も読者も離れていくという現象が起こっています。
また、デジタルコンテンツが整備されていくにつれ、作者自身がコンテンツを作り宣伝もできるようになると、特に出版社という組織に頼らず、自らが組織化をしてしまうという流れも起きます。
原作者というのは、職人であり「出版する」という立場から物事を見ません。
あくまで「作品を通して何を語らうか」を感じているはずです。
リンゴを売るのに、いくら儲かってもリンゴの品質を落とすような売り方では作り手も酷く傷つきます。
あくまで「作ったままの想い」と「品質」をリンゴを食べる人、それを感じてくれる人へと届けたいわけですね。
じゃあ手荒な真似をする中間業者がコスト的にも品質的にもリンゴの悪化を招いているとわかっていて、なおかつ中間業者に頼らなくてもよいような流通ルートと方法ができると、「自分でやってみようかな」という気持ちが起こるのは当然です。
最初は不満を持つ各個人が自己展開する形が多くなりますが、そのうちこのバラバラの個々を取りまとめようとする大手の出版社ではない組織(これは原作者協会に近い団体)が現れ、ネットワークを作り、整備しようとするはずです。
「腕が上がると独立しようとする。しかし自分でやって残るのは2割にも満たない。つまり技術と経営とはまったく別だということに気がついていない」
特に大手の出版社は経営と流通のノウハウを持っていることに大きな強みを持っていますし、この点に過信があり「原作者が独立を志そうと、痛い目を見てまた戻ってくるに違いない」と踏んでいるはずです。
しかし在庫があまりすぎている出版社事情に反して、原作者の「作品本来の力を取り戻そう」という動きは、皮肉ながらデジタル化によって徐々に活発になり「作品力の強いものは装丁にこだわり、デザインの面からも本来の本の魅力を取り戻そう」となるのではないかと思います。
これは当然在庫があまるのを極度に恐れますから、生産量を抑制し書籍が投機の対象とならないためにも消費者の発注を受けてから生産をする「オンデマンド形式」が主流になり、店頭流通は「カフェ形式」での「店頭で紅茶でも飲みながら読む」形が流行りそうな予感がします。
カフェが月ごとにテーマを絞って店頭に置く書籍を変えるのも面白いかもしれませんね。
各書店は各分野に特化した店作りをしないと生き残れないし、大型書店はデジタル化によって現物としての本の力を徐々に失うわけですから、漫画本とかゲーム攻略本とか雑誌販売が主になり、小説などの本は一部の作者を除いて減らざるをえないのではと思うわけです。
作品本来の力を取り戻すには組織そのものが「ブランド化」する必要があります。
これはよりよいものを選別し、その経緯を透明化させ、組織が読者と親身に語らい強固なネットワーク化を図ることによって得られると思います。
…簡単に言うと、会社の中で話し合うんじゃなくて読者と話そうよってことね。
うち、こうやってて、これがいい本だと思うんだよねー…っていうことを言う。
従来の中小出版社は現在出版不況の波に駆逐されていますが、新たなデジタルにおける手法によって各地で立ち上げられ、新しい出版社同士のネットワークもできあがるでしょう。
問い合わせたら「ああ、その本はこっちの出版者のほうがいいよ」ってことになりそうです。
その出版社ネットワークに読者も複雑に絡み合うというシステムを構築できるのが「ツイッター」のようなツールであると思います。
どうにも日本における巨大な組織というのは、「白い巨塔」のように古くわずらわしいしがらみ(上の人間や組織が幅を利かす)があるようで、出版業界も同じのようではありますが、幕府に従っていてはどうにもならんという出版維新もようやく日本で起こりそうな気がしています。
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