文藝春秋で最初読んだのですが、初回読んだとき、読みづらくて読みづらくて、まるでマシンガンでしゃべるおばちゃんの話を聞いているみたいで、最後のほうで最初に言ってた話ってなんだっけと思いながら、文章も頭の中にしっかり入らず、読み終わってみたときには、「結局どんなことが書かれていたんだっけ?」と思いました。
慣れるまでとても時間のかかる文章です。
大阪弁でよくしゃべるおばちゃんを相手にしているみたい。
大阪の人だと、饒舌な文章もしっかり入ってくるのでしょうけれど、私は初回ではダメでした。
結局二回読んで、しっかり話の仕掛けが読み込めたところ。
豊胸手術というものが目に付きすぎると大事なことを見落とす。
三人が重要なキーをつかさどって話は進む。
石原慎太郎がとても酷評していて(というよりも、興味ないという感じ)で、酷評したことも後悔することはないだろうと断言している。
私は女性の知り合いから「よいけれど、女性しかわからないかも」と言われていたので、じゃあ読んでみようかと購入したのですけれど、仕掛けが読み込めれば、それぞれの絡みあいがよく見えてきます。
私は女性ではないので、全部は理解することはできないけれど、話の中に対比があって、その対比がぶつかり合っている仕掛けがとてもおもしろい。
育っていくものと、衰えていくもの。
女性は女性だけで成り立ちうるのか、いや成り立たせなければならないだろう、でもどうなんだ、という主題が私には見えた。
それが話の中で出てくる主人公を含めた三人の中に見え隠れする。
でも、ちょっと・・・時折殺伐としている。
現代人っぽい乾いた価値観がある。
いや、ちょっと違う。
乾いた視点と言ったほうがいいのだろうか。
話し言葉のような文章の饒舌さの中に乾いた視点が見え、それがあいまいなぬくもりを与えている。
当初、噺家が話す落語のようなキレがあるかと思いきや、それはない。
浅いといえば浅い。
だが何もないかといえばそうではなく、相当読者側の受け取り方に文章をぽいと渡すような感じだ。
だからモチーフや象徴物が多くて、この話自体は、ほとんど何にも突っ込んではいない。
突っ込んで掘り下げるのは、読者そのものになる。
だから読む人によってはなんの感動もないし、なんの広がりも持ちえない。
本が読者を選んでいるのではない。
読者が完成させる本だ。
そう思うと「女性にしかわからないかも」という知り合いの言葉も納得できた。
仕掛けに満ちた本だと選評にもあるが、キーポイントをきちんと拾い上げなければ、ただのどこにでもいる女の話になる。
男性の方は注意されたし。
[1回]
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