時間があると無駄に使い、時間がなくなると大事に使い出す。
追い込まれないとやらない性格。
メリハリがない。
まあ、ろくでもない男なのですが、そんな私がデパートの催事場で素敵な出会いをいたしました。
ちょうど全国の職人が作った物品がありまして、染物から陶芸、タンスなどなど色々ありました。
その中で北海道の職人さんが数名おりまして、2時間ほど漆塗りの職人さんと話しこみました。
札幌に住んでいる方らしいのですが、この地で漆塗りとは珍しいなと思いまして、だいぶ話こんでしまいましたよ。
月10万ちょっとほどの収入で、時給に換算すればわりに合わないと言っていましたが、貧乏だとは感じたことはないと言っていました。
「工夫して暮らせば充分暮らしていける。宝くじで100万当たったら生協でカートいっぱいに買い物してみたい」
そう言う人なのですから、贅沢な暮らしをしたいという欲望がなく、現在が幸福なのだということが伝わってきました。
「札幌市も職人の家賃を優遇するなどの措置を取れば、だいぶ芸術文化発達するのにね。家賃浮いたらだいぶ助かるよ」
と話しておりました。
お弟子さんとかは取らないんですかと聞いたところ、取る余裕がない、忙しい、とは言っていたものの、教えて欲しいと来るなら教える、こっちなんてお金払って教えてもらったくらいなんだから。
と言っていましたよ。
札幌 修工房
と検索すれば出てくる場所です。
革が専門の漆塗り職人。面白い人です。
職人さんたちが色々集まって、たまに飲み会するそうです。
その時言い合ったりしないのですか? と聞いたところ、
「お互いプロだから言い合ったりはしない。仕事の話は一切出ない。互いにそれで食っているし認め合っているから。でも画家が集まると言うみたいだね。たまに違うことやっている人から大きな指摘受けて大きなヒントもらうこともある」
と言ってました。
作家も画家と同じようなもので、口出しせずにはいられないようなところがあり、ちょっと文章かじっていたりすると余計に言いたくなる。
あれ、なんなんでしょうね。
やっていることが似通っているから、互いのポリシーみたいなのをぶつけたくなるのでしょうか。
私も考え方が変わってきて、過去の日記を読むと、青いなコイツと鼻で笑いたくなりますが、でも自分で突っ込みいれたくなるほどの苛立ちを覚えるのですから、他人だとまた苛立ちがあるんでしょうな。
どうしてこうしねぇんだよ、みたいな。
自分の作品手に一つ取って、この真ん中に穴開けて時計にしちゃってもいい、なんて言うもんだから「自分の作品にそんなことされて気にしないんですか?」「逆にその発想が面白いと思うよ」と言っていたので、ちょっと驚きました。
自分なんて作品に他人の手入ると苛立つのに、他人のアイディアを柔軟に受け入れる姿勢がとても刺激になりました。
自分も改めないといけない、と思いましたよ。
だいぶ話し込んで、
「子供が大学生で自分で稼いで通ってる。子供は気にしていないみたいだけど、父親としてちゃんと金は払いたかった。他の人が遊んでいるところを働いているからね。もっと自由な時間が作れたんじゃないかと思うところはある」
とも話していたし、初対面の私でも話しこんでくれ、しかも帰り際革のしおりを買う際に「財布大丈夫?」とこっちのことも心配してくれたのですから、いい人なんでしょうね(私その時求職中でしたので)。
誰か若いうちに漆塗り学んで北海道にも漆塗りの文化を根付かせて欲しいですね。
そう、その人との話の中で一番の目からうろこの話がありましたので、ぜひ書き残しておきたい。
統合失調症の方がいる施設でも革細工のことを教えて実践させるみたいなのですが、その時療養中の方が間違って革2枚を重ねてパンチで穴を開けてしまったようなのです。
もちろん全員同じものを作るのに手順どおりやっていたところ、その人だけミスしたことになります。
そうしたら失敗したことに恐怖を覚えたのか、ガタガタと震えだして止まらなくなってしまった。
「大丈夫。全然失敗していないよ。ほら見てご覧」
と焦ることなく、職人さんはパンチで逆に穴を開けまくった。
そしてメッシュ状のコースターを作ってみせて「ほら、失敗していないでしょ」と言うと、とても喜んでくれたのだそう。
「もしかしたら20代30代の時だったら、そんなことできなかったかもしれない。今だからできることなのかも。50になって、ようやく見えてきたものもあるから、これから先また見えてくるものが楽しみ」
と話していました。
その話にとても感動。
お互い住所も交換し、出会えることを楽しみにしているところです。
さて、もう一人話し込んだ人がいて、さすがにそちらは時間を取れず、今度お酒でも持って行こうかなと思っているのですが、北海道の土を使って焼き物をしている方でした。
凍土会というグループを作って活動なされている方なのですが、器が若干歪。
「これ、わざとこうして歪ませているのですか?」と聞くと、
「わざわざ歪ませるとあざとくなる。だからヘラですくった時に出る勢いで自然に歪んだものをそのままにしている」
とのことで、なかなか味のある、土気の強い、ゴツゴツとした器でした。
創作のヒントがここにもありますね。
北大の先生に聞きながら地層を研究して自分で土を採取しに行くのだとか。
まあそんな話をしながら催事場で4時間近く過ごしたのかな。
なかなかの穴場でした。
また調べて行きたいと思います。
漆塗りの職人さんから聞いた漆のワンポイント。
器のところに段差があるのわかりますでしょうか。
これ、ちゃんと中に布を入れて欠けない様にしているのだそう。
特にこのヘリの部分と器の底の部分、つまり欠けやすいところをしっかりと頑丈にしているかどうかは、ちゃんとやっているかどうかのポイントなのだそうです。
皆さんも器を見る時に、じっくりと見てみるといいですね。
そしてBARで偶然知り合った人なのですが、公演の帰りとかで坦々麺食べていかんかと、店の前のおばちゃんに誘われ断りきれずに食べて来たついでに偶然入ったBARらしく、カウンターの席がちょこっと空いたので、隣の席どうぞとお誘いしたら、室蘭で歴史的建造物を残そうと活動なさっている人だと知り、色々余計な事私が話したような気もしますが、とりあえずこちらもしっかり連絡先ゲット。
新聞にも何度か載っている方なのですね。
そんな偶然が重なり人脈は広がっております。
京都で学んだことが、ここで生かされようとは思いもしなかった。
京都での生活がなかったら、この方とも話が広がらなかったでしょう。
今になって、今までの生活がありがたいと思うようになってきました。
ちなみに、その方が売っているキャンドル。
http://hoqsei.com/[0回]