10年近く前に、レストランでバイトをしていた。
そこで当時高校生だったU君に出会ったのですが、その頃はとてもきつい目をしていて、刺々しいものを持っていた。
厨房に入っていて、料理を作る面白さを知り、ぜひ料理の道でやっていきたいと言っていた。
自分はその子の刺々しくて、何か心の中に秘めているような感じが大好きで、たまに話しかけていた。
それからバイトをやめても、その子のことがなんとなく気になったので何ヶ月かに一度メールをする程度だけれど、連絡を取っていた。
色々なバイトを転々としながら、少しずつ料理の道を歩んでいたけれど、途中で和食の道でうつ病にかかって、ホテル業で働いていた。
日本だけなのか、よくわからないけれど、料理の世界って、一部では理不尽な暴力が横行している。
自分もシェフの店で働いていたことがあるので一部始終は見ていたのだけれど、下っ端の連中が特にひどかった。
叱るとか怒るとかの程度ではなく、少し執拗な部分があって、意味のない言葉や物理的な暴力が平然と行われていた。
ああいうのを見てしまうと、いつも「このレストランはどうなんだろう」と思ってしまうけれど、いかに料理が上手でも、見た目が凄くて味がよくても、必要のない暴力で成り立っている人たちが作っているのかと気持ち悪くなる。ついつい勘ぐってしまうようになった。
私が見たのはフレンチだったけれど、和食がもっときついのは他の人の話す内容ですぐわかった。
久しぶりに会ったU君は、あの頃の刺々しい目もなく、話し方も人間も丸くなりすぎていて、何かに燃え上がるような精神はなかった。
でも、一緒に室蘭焼き鳥を食いながら、薄々料理をやりたい気持ちはあると言うU君に「俺今文章やろうとしているけど、文章書かない作家なんて作家じゃない。それと同じように、料理作らない料理人なんて料理人じゃない。嫌でも落ち込んでも、がむしゃらに作っていかないと何も始まらない」と伝えた。
それからまた数年たって、今日メールが来た。
結婚してフランスにいると言う。
1年の長期ビザを取って、まだ働くところもないけれどフランス料理を勉強したいとメールしてきた。
今私はこのことをたくさんの人に伝えたくてしょうがない。
10年近く費やしたけれど、確実に進んでいる。がんばっている。
そのことが嬉しくてしょうがない。
税理士を目指すといっていた人も諦めないでちゃんと進んでいる。
こういう知らせを受けると、「ああ、自分も生きていかないとなぁ」と思う。
がんばらねば。
未来に光り輝く星たちの側にいることができて、自分はとても幸福だと思う。
あなたたちに出会えて、心から感謝します。
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