今年に入り2ヶ月半経ちました。
相変わらず去年のようなペースでダラダラと進みつつ、文章や芸のこととは別の方向性で頑張っており、そこで少し発想を変えて職場を変えて働いていたら、どうにも使い勝手が悪く、動きづらさを感じすぎていたので、ここは自腹を切って自分で環境を変えようと思い立ち、道具を東急ハンズで買いました。
東急ハンズの外に出ると先ほどまで降ってなかった雨がパラパラと強く降ってきていて、雨傘も持ってきていなかったことから、嫌な雲行きだなと感じまして。だって、だいたい自分の場合、いいことが起こるというか何かしら予感を感じる時って晴れていて、ほぼお天道様のタイミングを掴むことが物凄く多いのですが、今回に関しては道具一式揃えての帰り際の雨。なんだか流れが悪いと感じるわけじゃないですか。
それで、狸小路というアーケードがある通りが近く、知っている店も多いので、どこかのお店で雨宿りさせてもらおうかなと思い、どのお店に行こうかなと思っていたら、ふと以前フリーの声優の柴田マサタカさんという方と一緒に行ったお店を思い出し、そこへふらりと立ち寄って飲んでいたわけです。
時間帯が早いせいもあって、お客は少なく、マスターも自分の顔を覚えていてくださって色々な話をしましたが、結構2回目でも突っ込んだ話をしてくれるというか、ズバズバ屈託なく意見も言ってくれる人なので、この方は正直な人なのだろうなと感じ、たぶん人によっては反発するようなこともしっかりと考えていて、自分にとってはとても好きになれる人でした。
裏表ないってこういう人のこと言うんだろうなと。
「ナレーションとかで稼いでるんだっけ?」
「いや、稼いでるってほどでもないですね。元々小説とか書いていたんですけどね」
との流れから、
「それ、本気でやらないとダメだよ」
と言われ、色々と聞いてみました。
「いくつまでに何をしたいか決めないと、ダラダラとやるだけじゃん。本気って言うのは寝る間も惜しんでやるものでしょ。俺はお客さんもそう呼ぶけど仲間のためなら自分の持っている力総結集させるよ。自分が担がれてここまで来たから、逆にその次元になったらやらなきゃ」
「自分がそのレベルまで行かなきゃ。他の人よりも上のレベルになってようやく他人を助けられるんだよ。それまでは絶対自分のことだけで精一杯だと思うんだよね」
「夢って実現させなきゃ本当に夢じゃん。そういう幻想を語っているうちって本当に口だけの人でしょ。情報もそうじゃん。他人から聞きましたっていうのは違う。自分で見ましたっていうのが情報じゃん。そういう情報持ってないんだもん。」
「本気じゃなければ諦めればいい。時間の無駄じゃん」
「だってそいつ(口だけのヤツ)、泥すすったことないじゃん」
とまあ、改めてというか、だいぶ酔っ払ってしまいましたが気持ちが引き締まる思いで。
わかってはいるけれど、とか、わかっている、ってのは人間絶対嘘なんですよね。本当に理解しているっていうのは行為に出るし、行為に出ないのは、なんらかの理由が存在するからですよね。
例えば自分の場合グダグダと特に精神的な理由をつけて「時間がない」というようなことを繰り返し毎日を過ごしてきましたが、それも工夫すれば工面できた時間たち。もうちょっと気持ちを強く持てば、切り替え方をきちんと学んでいれば、毎日進めている。色々反省点はあるわけです。
自腹で職場環境変えるために色々買ってきたことを告げると「いいね!自腹っていうのが大事だね!」と言われました。
自分もそこらへんはわきまえていて、いくら自分の職場でも他人の場所なので、それはただの押し付けがましいことかもしれないし、やろうとしていることも自分勝手なことだから、もしかしたらまったく相手側にとってメリットはないかもしれないという危険性もある。言ってしまえば、自分の能力が低いからっていうのが一番大きいから偉そうなことも言えない。
大きな荷物抱えて外に出るとまだ雨が降っていてビニール傘を貸してくれました。
「必ず返しに来ますね」
と伝え、さあもう一件(元々そこに行きたかった)ってな具合で雨の中、行きたかった店の近くの横断歩道の縁石をピョンと飛び越えて着地した瞬間にくじきまして、そのまま立つことができずにうずくまってしまいました。
左足関節に特に鈍く重い痛みが走っており、力が入らず濡れた路面にお尻をべったりとつけて、「あーっ」と低くうめきながら呼吸をし、今度は傘が杖代わりになり、ようやく立ち上がってすぐさまタクシーを呼んで家まで帰りました。
「すいません。シート汚れちゃうかも」
と謝りながら「いいよいいよ」なんて言われながら、これ本当に力はいらない、立っているのがやっとだと思って、タクシー降りてからも引きずるというより、なんとか一歩、また一歩と雨の中時間をかけて前に進んで家までたどり着くという具合でした。
家に帰っても両親が「これは普通じゃない」と言うので、ばあちゃん用の車椅子に乗り、雨の中誰の手も借りず動かしていたのですが、車椅子に使う力とか、スロープでどの程度の負荷がかかってくるのかとか、色々なことがわかって新鮮でした。
歩けはしないけれど、耐えられないほど痛くはなかったので、自分でも楽観視しているところがありました。
雨は止む気配がなく、激しく降り注いでいました。救急外来。父親の車で行きました。
10年ほど前でしょうか。同じ病院に、似たような時間に来ました。
救急車のサイレンを消してくださいと言った記憶があります。
母がうつ病で首を切り、救急車で運ばれた時同席してました。首の傷はたいしたことはなく、傷口からも致命傷ではないとわかりましたし、以前に大きな音を覚えていて過剰に反応する母の様子を見ていたのでサイレンを消してくださいと言ったんです。
救急隊員は怪訝そうな顔をしていましたが、父がすいませんつけてくださいって言ってサイレン鳴らしながら行ったという記憶があります。
同じ廊下。似たような病室。一人でその廊下まで車椅子をこぎ、眺めていると勝手に涙が出てきて、一人で泣いてしまった。
色んな思いが込み上げてきたんでしょうね。自分への思いも、思い出しました。
3月9日深夜。診察時には10日に変わっていました。
診察は左足関節外果骨折。細い骨が二箇所折れていました。
L字型の足固定用の器具をつけて包帯で巻いて、それで帰るという流れ。
なんかもう、一つ一つの説明を冷静に聞いていて、手術で金具を入れる可能性が七割、靭帯ももしかしたら切れていたりする可能性もある、など何の感情も浮かばず、ただ浮かんだことと言えば皮肉なことだなという思いだけでした。
文章のこととは関係のないことをして、その道具を気合を入れて買った矢先に起こした怪我。
「本気でやれ」とのマスターの話。
立ち仕事なので、しばらく仕事はまったくできない状況になった。
そして3月という時期。文学賞の締め切りが目白押しである。
まったく頭の中になかった思いがぐっともたげてきて、これはもう、文章を書けという天命なのだろうなと妙に納得している自分がいて、これで本気でやれなかったら本物のクズ野郎だなと苦笑している自分もいました。
次の日近くの整形外科の待合室で目の前に相田みつをの「本気」の詩が。
また本気かよ。もうわかったよ。なんてしつこさにうんざりしながら、自分の性格も冷静に考えて、これぐらいしつこくないと無理だなとどうしようもない自分に冷めた目を向けておりました。
先生の説明は二箇所折れてますとのこと。あれ、自分の見立てであってるじゃんか、と。
「この白い線わかります? これ骨がずれた跡なんですよ。これね、2mm以上ずれたら手術しか手がなくなるんですけど、まだ1mmの範囲なのでギプスという選択肢もあります」
手術すると10cm切って金具をいれ、さらに一年後に取るそうなんですね。治ったと思ってるのに、さらに手術っていうのも面倒なので、ギプスと言うか正確に言うとプロテクターのような着脱可能なものらしいのですが(イメージ的にはアイスホッケーのプロテクターのようなものが近い)、それをつけることにしました。
さて、松葉杖生活。小さな小物がとても危険に感じるようになりました。
例えば瓶や紙、袋、箱など、小さなスペースも動きづらいし、周囲に物があるだけで今までとは違った感覚で注意しなければいけなくなりました。
足一つ使えなくなるだけで、これだけ世界が変わるのかと、どこかしら新鮮な気持ちを抱きつつ、例えば足を折ったり、手が使えなくなったりしたら、仕事もできなくなるし、周囲に知り合いもいなかった場合助けも呼べずに一人で生活しなければいけないのですから、本当にこれは大変なのだなと改めて感じました。
大変だなと眺めるのと、自分が大変さを被るのとでは、言葉の上では違うとわかっているのですが、その感覚を生めるのはとても難しい。
今とてもいい経験をさせていただいているのだなと、すっきりとした気持ちで過ごしております。
立ち仕事できなくなって、それで悩み事が今は消え、マスターの言葉もあり、わりとシンプルに物事を捉えようとしています。
ごちゃごちゃしていた心が整理された感がありますよ。
さて、せっかくのお休みなので、文章書いていこうと思っております。
救急外来の帰りのときから「窓」が浮かんでいて「窓」と「部屋」で一つ心の中を描写しながら小説書こうと思っています。
ある意味これも、一つチャンスを与えてくださったのだと思うことにしています。
「本気」 著:相田みつを
なんでもいいからさ
本気でやってごらん
本気でやれば
たのしいから
本気でやれば
つかれないから
つかれても
つかれが
さわやかだから
追記:
ちょっと前にもリアルラジオのDJさんと話し合ってFMの枠が取れるかどうかという話の中で、「それだけいいもの持っている団体なら、無理にでも負荷かけたほうがいいんじゃないのかな。僕も面白かったらガンガンラジオで流すから」という話をされていて、色んな意味でここが踏ん張り時、むしろこの機会を逃したら一生なくなるんじゃないかというぐらい。
思うところが多すぎる。
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